その男、保釈金三億円也。
“宮崎学、初の警察小説”ということである。その上、あの“闇の守護神”田中森一が監修とあるからには、興味半分でも一読してみないわけにはいかない。題材が、愛知県警を舞台にしたリフォーム詐欺事件であるということは、もちろんあの『警察の闇 愛知県警の罪』に取り上げた件がベースとなっている。それならばここで、不祥事続きの愛知県警を、さらにコテンパンにあげつらうのかと思いきや、切り口はより深く、新たな事実を惜しげもなく暴いており、複雑な事件の暗部をえぐるような筆致には驚かされた。宮崎学に特有と言える、いつもの一方的な警察批判は影を潜め、被疑者と司法の息詰まる駆け引きへと焦点を当てて、それぞれの葛藤を描き切った快作となっている。この宮崎の見せた新たな視点は、おそらく辣腕の特捜検事として名を馳せた田中森一とのコラボレーションによってもたらされた成果だろう。これは宮崎学、田中森一ファンのみならず、一級のエンターテインメント小説として楽しめる仕上がりだと思う。