国連安保理と日本―常任理事国入り問題の軌跡
筆者は日本の外交を研究するドイツの学者であり、この分野では世界的に知られている。本書は文句なしの力作である。50年代から90年代までの日本の常任理事国入りへの軌跡を丹念に追っている。本書の分析の特徴は、外務省こそが日本の国連政策の中心だとし、常任理事国入りをめぐる外務官僚の発言、または外務省の声明を徹底的に洗い出し、分析の基礎としていることである。外務官僚へのインタビューも無数に行っている。日本の国連政策をここまで実証的に論じた書物は他にないのではないか。
しかし、今となっては本書の中身は古すぎる。2000年代の前半から半ばにかけて、日本の常任理事国入りへの気運は史上最も高まったと言っていいが、このプロセスは当然のことながら本書には書かれていない。今日、常任理事国入り問題を考える上ではこのプロセスを理解することが最重要であろう。従って、現在本書を読むことの意義はかなり限定的になってしまっている。
NSC国家安全保障会議―危機管理・安保政策統合メカニズムの比較研究
政府の司令塔である大統領府・首相府の国家戦略の最高意思決定機関の解説書。
本家のアメリカだけでなく、英国や中国・韓国など各国の制度を網羅しています。
一般の人にはなじみはありませんが、アメリカのドラマ「ザ・ホワイトハウス」「24」。映画では「13ディズ」でよく出てくる機関ですね。
NSCに関する書籍は日本では初めてです。ネットで調べても詳しく載っていないので、著者と出版社に感謝します。
国際政治・行政の危機管理システムに関心のある人と大学生は読んでくれると思いますが、国会議員には是非読んでほしいと思います。
日本では安保会議の改正が進んでいないので・・・
人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書)
「人道的介入」を学ぶ上で、必読の好著です。
ただ、最後の「和解」についての議論では、和解を達成するためにはどうすればいいのかということに関し、具体的なことがほとんど論じられていなかったのが残念です。
「和解」ということまで視野に入れた広がりのある議論をしているのに、議論が緊急人道救援に偏り過ぎているのではないかとも思いました。近年、よく耳にすることは、緊急人道支援から国土復興、復興後の開発支援まで「切れ目」のない支援を行うことで、内戦などで荒廃した不安定な地域を安定化させ、紛争の火種をなくしていく努力の重要性であり、こうした努力は「和解」のための環境を醸成するとも思うのですが…。
紛争当事者の合意が得られて活動できるとは必ずしも限らないことが多くなった現在、内戦などで脆弱になった地域において、息の長い支援活動を行う際の、軍事的なものから非軍事的なものに至るまでの様々な支援活動についても、もっと触れてほしかった。